新規事業ニュース

新規事業の創出を志向する企業の動向が分かる情報をお届けします。大手企業の新規事業担当者や新規事業策定を支援するコンサルタント向けのニュースサイトです。

【関西ペイント】福井発で漆喰和紙壁紙、抗菌・抗ウイルス機能生かす

新規事業:壁紙事業

化学工業日報(2017/9/5)

関西ペイントは4日、福井県庁で会見を開き、国内初となる抗菌・抗ウイルス機能を持つ「漆喰和紙壁紙」の試作品を開発したと発表した。同社、越前和紙を製造する企業、福井県による産学官連携プロジェクト。同社が壁紙に展開するのも初となる。日本に根付く“壁紙文化”において塗料の高機能と伝統産業を融合させ、新ビジネスにつなげる。事業化は来年度を予定。ホテル、介護施設、学校などをターゲットに売上目標は5年後に1億円を目指す。

漆喰和紙壁紙は同社の漆喰塗料「アレスシックイ」の派生品で、昨年上市した「アレスシックイモンティアート」が活用されている。漆喰の持つ抗菌・抗ウイルス・消臭機能を持ちながら、紙・不織布・フィルムなどさまざまなものに塗ることができる。最近では長崎大学・熱帯医学研究所と協力し、漆喰の強アルカリ性がウイルスの構造を変え、感染力を低下させる仕組みを実証。インテリアやアウトドア用品など新規市場への参入を狙う

越前和紙は1992年に福井県内での売上高が95億円のピークを最後に、直近では28億円と大苦戦。事業社数も減少の一途をたどり、従来にない革新的製品の開発は喫緊の課題だった。今回のプロジェクトは和紙産業の活性化と、モンティアートの新展開を狙う関西ペイントの思惑が一致。和紙本来の持つ調湿効果に漆喰塗料の機能を融合させた高機能和紙を開発、商品化につなげる。

試作品は福井県の小畑製作所が壁紙の元となる表層の和紙を機械漉きで製造。清水加工が漆喰塗料を和紙に塗工する技術を開発した。表層紙に難燃紙の裏打ち紙を張り合わせ、漆喰和紙壁紙として完成。販売は福井県の和プラスが手掛ける予定。なお、今年度は福井県から約900万円が支援されている。県としては今後も販路開拓などで支援する方向。

関西ペイントの中野佳成上席執行役員汎用塗料本部副本部長は、記者会見で「抗ウイルス機能を持つ和紙のみならず、当社としても壁紙へ参入するのは初。製品は一般の壁紙の3倍程度になるだろう。コスト削減は課題の一つだ。今後も『和』を強調し、海外へ日本のスタイルを訴求できる製品づくりに協力していきたい」と述べた。