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【日医工】レミケードBSで逆転狙う  日本人データと提携を武器に

新規事業:抗リウマチ薬のバイオミラー事業

日刊薬業(2017/9/19)

日医工が11月にも、抗リウマチ薬「レミケード」のバイオシミラー(BS)を市場に投入する。日本化薬に続いて2番手の参入となるが、日本人の臨床第3相(P3)試験データを持つことや、レミケードの適応である疾患領域に強い企業との提携を武器に逆転を狙う。提携に関しては、リウマチ領域に強いあゆみ製薬との販売提携に続いて、消化器領域に強い企業とコ・プロモーションの提携を結ぶことも視野に入れている。日医工の松山研治常務執行役員・経営企画本部長が15日、日刊薬業の取材で明らかにした。

11月にも収載・発売、2番手で参入

レミケードは田辺三菱製薬の最主力品で、年間売上高は600億円を超える。日本化薬が2014年に初のBSを発売しているが、これに続いて日医工は、自社と子会社(ヤクハン製薬)の2ルートで、レミケードBSを15年9月に申請。今年7月に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過しており、順調にいけば今月下旬に承認され、11月にも薬価収載・発売にこぎ着ける見込み。当初は16年度の承認を目指していたが、医薬品医療機器総合機構からの照会事項への回答に時間がかかり審査が長引いたため、17年度にずれ込むことになった。適応は関節リウマチ、乾癬、潰瘍性大腸炎クローン病。再審査期間が残ることから、べーチェット病による難治性網膜ぶどう膜炎、強直性脊椎炎、ベーチェット病川崎病の適応は現時点では取れない。薬価は日本化薬のレミケードBSと同じになるとみられる。

自社で申請したBSは日医工が販売し、子会社が申請したBSは、リウマチ領域に強みを持つあゆみ製薬に販売権を許諾する。松山氏はレミケードBSを2つのルートで申請した理由について「リウマチ領域に強い企業と組むことを当初から考えていたため」と明かす。

消化器領域に強い企業との提携も視野

日医工でのレミケードBSの営業や情報提供・収集活動は、昨年秋に営業本部に設けた「バイオシミラー部」に配置した約50人のMRを中心に行う。先行品との競争では同等性と価格面のメリットを、他社BSとの競争では日本人を対象にしたP3試験データを持つことをそれぞれ前面に押し出して市場獲得を狙う。

レミケードの適応の一つであるリウマチ領域に強みを持つことから販売提携を結んだあゆみ製薬との関係については「基本的にはそれぞれフリーで販売するが、日医工が持つエビデンスを共有するといった形で連携していく」という。さらに潰瘍性大腸炎クローン病の適応も持つことから、消化器領域に強い企業とコ・プロモーションの提携を行うことも視野に入れている。

田辺三菱日本化薬の16年度決算データを基にすると、レミケードBSの金額シェアは2%程度にとどまっている。BSに対する医療関係者の理解が十分に進んでいないことなどが理由とみられる。ただ政府が「骨太方針2017」で20年度末までにBSの品目数を成分ベースで倍増させる目標を打ち出すなど使用促進に向けた動きが加速してきている。松山氏は「BSの普及に関してはだんだんと潮目が変わってきており、レミケードBSに関しても今後普及していく可能性がある」と予測。その上で、レミケードBSがまだ十分に浸透しておらず食い込む余地があることや、日本人のP3試験データや提携といった強みを持つことなどから「2番手で参入しても、自社とあゆみ製薬の分を合わせれば(日本化薬を)追い越せるチャンスは十分にあると思う」と強気の姿勢を示した。

開発品の導入も検討

松山氏は、BSの開発状況も説明。レミケードBSについては米国ではP3試験段階にあり、19年の承認取得を目指している。抗がん剤ハーセプチン」BSは、17年度中に日米欧でグローバルP1試験を開始するための準備を進めている。一方、18年にP1試験を開始する予定だった抗がん剤「リツキサン」BSについては開発方針を再考しているという。

松山氏は「BSを今後の事業の柱の一つに育てていきたい。その第1弾となるレミケードBSをまずは成功させたい。またBS事業を成長させるため、必要に応じて開発品目をベンチャー企業や他社から導入することも検討していきたい」と締めくくった。