新規事業ニュース

新規事業の創出を志向する企業の動向が分かる情報をお届けします。大手企業の新規事業担当者や新規事業策定を支援するコンサルタント向けのニュースサイトです。

【三菱商事】工場や倉庫もシェア経済、三菱商事が賃貸向け取得

新規事業:工場/倉庫のシェア事業

日本経済新聞(2017/9/13)

三菱商事は工場や倉庫などの所有から利用への転換を促すサービスを始める。施設を買い取り、改修などをした上で利用者に貸し出す。事業運営に必要な機能を必要な時だけ使う「シェアリング」で活用できるようになる。民泊など消費者向けが中心だったシェアサービスがビジネス用途にも広がってきた。

千葉県市川市にある冷凍・冷蔵倉庫や加工センター2カ所を100億円で取得した。築15~25年の施設で、1カ所は改修して元の利用者に賃貸。もう1カ所はレイアウト変更など利便性を高めて新たなテナントを誘致する。今後、同様の資産取得を500億円程度まで拡大する。

多くの取引先を持つ三菱商事は他の企業でも利用しやすい構造や契約形態への見直しなどのノウハウを持つ。企業が工場や倉庫といった事業に使う資産を保有せずに必要に応じて賃借する仕組みは欧米ではすでに普及している。日本でもこの仕組みが広がれば、工場や倉庫を多くの企業が効率的に利用するシェアリングにも弾みがつきそう。

倉庫や工場を借りる企業にとっては長期の契約を結び賃料を払うだけで、不動産取得にともなう初期投資を抑えられる。10年以上にわたる減価償却や修繕に伴う費用は抑えられ、景気変動など変化の激しい事業環境に応じて資産を利用できるため、リスクを軽減することにもつながる。

施設を取得した三菱商事は元の持ち主や新しい借り主から賃料を得て収入にする。売却する企業にとっては得た資金を研究開発やM&Aといった本業にかかわる投資に充てることができる。

将来的には取得した土地・建物を年金や機関投資家などのファンドに売却することも検討する。オフィスビルや住宅が中心の不動産投資信託(REIT)にとっても新たな運用資産として注目が集まる可能性がある。

企業の資産の流動化はオフィスビルでは10年以上前から浸透している。ただ内部の造りがほぼ同じのオフィスビルに比べ、仕様がばらばらの工場や倉庫は流動化が難しかった。国土交通省の2013年の土地基本調査では事業会社が保有する工場の資産価値は12兆8000億円に達する。土地を合わせると潜在的な市場規模は20兆円を超えるとみられる。