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【三井物産】中国生物農薬大手に出資、製造受託で日本顧客向け独占権

新規事業:中国における生物農薬事業

化学工業日報(2017/9/22)

三井物産は、中国の生物農薬企業に資本参加した。発酵法による微生物農薬を手掛けており、同国の生物農薬では大手の一社。出資にともない、発酵設備を使った製造受託の日本顧客向けの独占販売権を獲得しており、受託発酵事業を拡大。さらには、これを機に年率10%以上の成長が続く同国の生物農薬市場への本格参入を目指す。同社は今年6月に米生物農薬企業を買収したばかりで、生物農薬のグローバル事業ネットワークの拡大に拍車をかけている

三井物産が資本参加したのは、武漢科諾生物科技股〓(カーネル社)。香港で上場する遠大医薬健康控股傘下の医薬企業である遠大医薬(グランド社)から今月、4・9%の株式を取得した。

カーネル社は微生物発酵技術と設備を保有、バチルス チューリンゲンシス(BT)、バチルス ズブチリス(BS)といった菌を主成分とした微生物農薬を製造販売している。シェアの大きさだけでなく技術や品質の安定性で定評があり、中国生物農薬市場ではリーディングカンパニーの一社と目されている。推定売上高は数十億円規模。

またカーネルは、生物農薬の販売だけでなく、所有する発酵設備を活用した製造受託も柱としている。三井物産も農薬や医薬の発酵製造委託先として取引があり、この関係のなかで提携に結びついた。

出資とともに、日本の顧客向けの製造受託に関する独占的な販売権を得た。また製造能力に関しても優先的に使用できる権利を獲得した。海外顧客についても代理店として機能する。

三井物産は、米生物農薬企業のセルティスUSA、国内の日本マイクロバイオファーマと、発酵設備を持つグループ企業を保持している。カーネルの設備を世界で3つ目の発酵拠点として活用、世界最適な生産・受託体制を整える。

三井物産は、農薬などのアグリ分野を最重要事業と位置付け、グローバル展開を強めている。農薬では、化学農薬に加え、成長性が高い生物農薬でも投資を活発にしており、6月にはセルティスを通じて昆虫病原性糸状菌系などの生物農薬を手掛ける米LAMインターナショナル社を買収したばかり。

中国での生物農薬の需要は年率2ケタで伸長。政府の指導などもあって先行きさらに伸びるとみられており、三井物産も重要地域とみている。これまで中国市場では本格的な展開に踏み切れないでいたが、今回のカーネルへの出資により、中国生物農薬市場の橋頭保を確保できた。カーネルの設備や販売網を活用するなどして中国展開を本格化する。